検体検査
一般検査
一般検査では主に尿、糞便、髄液、体腔液(胸水、腹水、関節液)、妊娠反応、血糖、HbA1c、赤血球沈降速度などの検査を行います。
1. 尿検査
尿は侵襲性が少なく、最も容易かつ多量に繰り返し採取できる検査材料で、腎・尿路系の状態を直接評価するのに役立ちます。提出していただいた尿はpH、比重、尿中成分(蛋白、糖、ビリルビン、ケトン、ウロビリノゲン、潜血、白血球など)を試験紙で判定します。
また、尿は遠心分離し、下に溜まった尿沈渣成分(赤血球、白血球、上皮細胞、円柱、細菌など)を顕微鏡で観察します。悪性細胞の有無、膀胱炎、腎疾患などを検査判定します。
2. 便検査
便潜血検査と虫卵の有無などを調べます。便潜血検査は大腸がんをはじめとした消化管の出血性病変のスクリーニングです。ごく微量の出血を検出できます。
3. 髄液検査
髄液は脳・脊髄を守っている液体です。正常髄液の外観は無色水様透明ですが、炎症などで白血球が増加すると混濁をきたします。中枢神経の感染症(髄膜炎、脳炎、梅毒など)、脳腫瘍、クモ膜下出血、脳水腫などの診断に有用です。細胞数、糖、蛋白などを測定し、顕微鏡で細胞を分類します。
4. 体腔液(胸水、腹水、関節液)検査
胸水、腹水は胸腔、腹腔に貯溜する液体です。病変によりこれらの体腔液は増量しますが、その性状によって滲出液、濾出液に分けられ臨床的意義も異なります。鑑別するために、外観、比重、蛋白量、細胞数などを測定します。
関節液検査では、特徴的な形態を呈する結晶(尿酸ナトリウム結晶、CPPD結晶)を検出し、炎症や痛風・偽痛風などの鑑別ができます。
糖代謝検査
血糖、HbA1c、糖負荷試験、インスリンなど糖尿病のコントロールなどに必要な検査です。
HbA1cは過去2ヶ月間の血糖値を反映します。インスリンは血糖をコントロールしているホルモンです。
当院では糖尿病教室を行っており、糖尿病関連の検査について患者様に説明し、治療に役立てていただいています。
血液検査
1.血球算定、血液像
末梢血中の有形成分である赤血球や白血球の数や形のほか、血小板数などを専用の自動分析装置で測定・分析します。貧血や感染の有無、出血傾向などの診断に有用です。
白血球分類、血液像
白血球は好中球、リンパ球、好酸球、好塩基球、単球に分類されます。この分類比率は様々な疾患の病態把握に重要です。また、血液中の白血球、赤血球、血小板などの血液細胞を顕微鏡で観察し、形態的異常や数的・質的変化を調べます。白血病などの血液疾患や炎症の診断には欠かせない検査です。
2.凝固検査
血漿中の出血を止める働き(凝固因子)や一度固まった血液を溶かす働き(線溶)など、止血機能について検査します。この検査は、手術前には必須であり、また血栓症(たとえば心筋梗塞など)の治療に使う抗凝固薬(血液を固まりにくくする薬)を服用されている患者様にはその効果をみるためにも重要な検査です。
3.骨髄検査
貧血や白血病など造血器疾患の診断のため、骨髄成分を調べます。
輸血検査
当院では、安全な輸血を心がけており、「輸血療法の実施に関する指針」に沿った輸血業務の一元管理を行い、輸血に関する検査、輸血システムによる管理・運用などを行っています。また、緊急時の輸血などにも24時間体制で対応しています。
使用血液製剤と使用目的
- 赤血球製剤: 末末梢循環器系への十分な酸素の供給、循環血液量を維持
- 新鮮凍結血漿: 凝固因子を補充し出血を予防、止血を促進
- 濃厚血小板: 止血を図り(治療的投与)、出血を防止
不適合輸血を防ぐため、ABO血液型や不規則抗体スクリーニング検査を行っています。
また、血液型の判定ミスや検体の取り違え、事務的ミスなどを防ぐため、検査の自動化を行っています。
生化学検査
血液、尿、穿刺液などに含まれる様々な成分(糖質、脂質、蛋白、酵素、電解質、薬物など)を分析します。メタボリックシンドロームの指標になる善玉コレステロール(HDLコレステロール)、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)や、お酒を飲むと高値になるγ-GTPなど各成分の値と各々のバランスから肝機能や腎機能など、体内の状態を知ることができます。疾患の診断・治療または予防に必要かつ重要な検査です。正確で有用なデータを迅速に臨床側に提供できるよう、日々機器整備を行い、精度管理に注意を払っています。
免疫血清検査
血清を用いて梅毒、肝炎ウイルスなどの感染症、ホルモン、腫瘍マーカー、心筋マーカー、自己抗体、リウマチ因子、アレルギーなどの検査をします。
感染症 | 梅毒、B型・C型肝炎ウイルス、HIV、マイコプラズマなど(感染の有無や感染状況) |
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ホルモン | TSH、FT3、FT4(甲状腺機能) |
腫瘍マーカー | CEA、AFP、CA19-9、SCC、シフラ、ProGRP(腫瘍の有無や腫瘍の種類・進行状況の推定) |
心筋マーカー | トロポニン、BNP(心筋梗塞、心不全など心臓への負担状況をみる) |
主要な血中薬物 | カルバマゼピン、バルプロ酸の測定を行っています |
微生物検査
感染症などの病気を引き起こしている原因の細菌を見つけ、どんな薬が有効かを調べる検査です。主に一般細菌、真菌、抗酸菌検査に分類されます。
一般細菌
喀痰、尿、糞便、血液などの検体から病気を引き起こしている原因菌を検査します。原因菌を特定するには塗抹、培養、同定・薬剤感受性検査を行います。
塗抹検査
検体をスライドガラスに塗布・染色して顕微鏡で観察し、どんな色や形の菌がいるかを調べます。特定の形をもった菌もいるため、重要な検査です。
培養検査
培地と呼ばれる栄養分が入った寒天に検体を接種し、菌を発育させます。
同定検査
培養検査で発育させた菌を使い、どのような菌がいるか同定検査を行います。
薬剤感受性検査
同定検査を行ったのちに薬剤感受性検査を行います。
菌によって効果がある薬が違いますので、薬剤感受性検査を実施することで原因菌にはどのような薬が有効かを調べます。
真菌検査
一般にキノコ、カビ、酵母と呼ばれる生物の総称です。
普段は常在菌として存在し、体のバランスを保つ役割をしており、普通は発現しません。しかし、不潔にしていたり、抵抗力が落ちたり、何らかの病気によって体が弱ってしまい免疫力が低下した際に、発現してしまう場合があります。
代表的なものに、アスペルギルス症、カンジダ症、クリプトコッカス症などがあります。
抗酸菌検査
染色を行った際に酸に対して抵抗性があり、染まりにくい細菌の総称です。
抗酸菌は主に肺結核を引き起こす結核菌と、それ以外の非定型抗酸菌に分けられます。
こちらも一般細菌検査と同様に塗抹、培養、同定・薬剤感受性検査を行います。
迅速検査
迅速検査は一般細菌検査などと比べ、操作が簡便かつ結果判定までの所要時間が短く、すぐに結果判定が可能です。
当院で行っている検査は以下の通りです。
- A群溶血レンサ球菌抗原
- クロストリジウム ディフィシル抗原・毒素
- 尿中肺炎球菌抗原
- 尿中レジオネラ抗原
- マイコプラズマ抗原
- インフルエンザ
- RSウイルス
- アデノウイルス(角膜・咽頭)
- ヒトメタニューモウイルス
- ノロウイルス
- ロタウイルス
病理検査
患者様の体から採取された組織や細胞を顕微鏡で観察して、病気の原因や成り立ちを調べます。治療方針の決定や予後の判定に必要な検査です。組織診検査、細胞診検査、術中迅速検査、病理解剖があります。
組織診検査
病変の一部を内視鏡や手術などで採取し、薄くスライスして染色し顕微鏡で観察します。病変がどのような細胞で構成されているか、病変の広がりはどうかなどを病理医が診断します。通常、検体処理に時間がかかるため診断まで数日要します。
細胞診検査
病変部から採取した細胞をガラスに塗り、染色して顕微鏡で観察します。喀痰や尿、胸水、腹水など様々な材料で行うことができます。
術中迅速検査
手術中に採取した検体を凍らせ、薄くスライスして染色し顕微鏡で観察し診断します。 手術中に迅速に報告することができます。
病理解剖
不幸にして亡くなられた患者様をご遺族の承諾のもとに行います。死因の解明や生前の診断や治療が適正かなどを検索します。